Sunday, January 11, 2009
『THE MOON』月の話
タクシーに乗ったら、ハミングする陽気な運転手、石黒さん。珍しいなぁと思いつつ、何の歌かわからなくても、こちらまで 笑みがこぼれ、気持ち軽くなる。ハミングしながら「今日は満月だね〜」と話しかけられた。「そうですねぇ、きれいですね、」と、夕方5時前、白く、まんまるに 出ている月の下「見えた」「隠れた」「どこ行った?」とビルの谷間を走ってもらうと、「私はね〜 あの!あそこに見える 月がなければ、宇宙に興味を持たなかったですよ〜♪」「人類自体、そうなんじゃないかなぁ〜。」と、予想外に 壮大な話がはじまった。
以後20分間ほど、地面の探求にも つながる月の存在のすごさ、月や天文学を取り入れて戦っていた戦国武将のすごい話、東京タワーから見たオレンジ色の月が、今まで一番よかった話、宇宙人はいると思うか?話・・などなど 曲がって欲しい信号の前で、なんとか言葉を挟みながらも、延々、車中、月の話に花が咲く。50代であろう石黒さん、伺えば、天文学を勉強されていたそう。(どうりで!)
「大きく オレンジで、太陽みたいに出てくる月の瞬間がある」とキラキラした目で言うから、すっかり私もそれを今度見たくなった。きっと今夜は、石黒タクシーに乗った人は、満月の天文学講座を受けるに違いない。夢あふれるいい話、ずいぶん 安いタクシー料金だった。あのまま、月に到着する気さえしたから...。
そんな話のあとに、来週末(16日)に公開される『THE MOON 』を一足早く見た。どんな宇宙映画かと思えば、人類進歩の映画といった内容で、石黒さんと同じ純粋な目をした、60年代当時のアポロの宇宙飛行士やクルーの方々が語るフィルムだった。アメリカや当時のソ連が月へ人類を送るために、どういうことが起こっていたのか、飛行士目線で綴られている。生死の狭間で夢を抱えた人々の、正直な言葉、わたしたち生命体に 対する視点の深さに、耳を奪われる。
『人が月を歩いている。』すごい。でも、本当の感覚は、おそらくわかるはずがない。NASAの蔵出し映像が見応えを増している。
「ホンモノ」は、どんなにきれいで、最新のフィクションものより、やはり語る力がある。月への道も 地図もない中、こんなこと、よく命がけでやろうと思ったもんだなぁ...と思わないでもないけれど... 同時に、これは 他の星から誰かが地球にいらしてても不思議でないね。そして、きっと苦労して辿り着いたのだろうから、会った日にはお茶でも出して差し上げたい。
私は、これまでにお会いした 宇宙飛行士の方や科学専門の方で、瞳がキラキラしていない人を知らない。闇を見つめ、光を未来に見いだすことが そう導くこともあると思うけれど、やはり「一生懸命、命をかけてやっている」人の目なのだと思う。そして、それは人として、とても健やかな精神なのだろうと。 ノスタルジー好きでもある私、宇宙は未来に傾いた話だと どこか思っていた節が強かったのだけれど、映画を観ていて、生命体の根源でもある宇宙は、壮大なノスタルジーの世界が広がっているのかも と思ったら、より興味が湧いてきた。宇宙話、最近 いろいろあるのだけど、長くなったので、また今度。
(写真は、『THE MOON』 のパンフレットの月。ロン・ハワード プレゼンツ作品。 月面着陸40周年記念 )